Tip12で鑿で木を刻む作業をした。刻むためには鑿の使い方をきちんとマスターする必要があるが、それ以上に鑿の刃をきちんと研いでおくことが大事だと言っても過言ではない。研いでおかないと削れないので加工に時間がかかるばかりか、木をたたき割るように加工することになるので、どんなに一流の腕を持っていたとしても、仕上がりが汚くなってしまう。一流のテクニックを発揮するには道具のメンテナンスも怠ってはいけない。

刃を研ぐには
刃を研ぐには研ぐための道具が必要だ。そこで自分用に砥石を新調した。
手順としては単純で、要は刃を石にこすりつけて、刃がきれいになるように削っていくだけだ。砥石を5分10分水につけたら、砥石の目の粗いもので研ぎ始め、研ぎくずが出たらまた水につけて、400番、1000番、3000番、8000番というように徐々に番手をあげていけば良い。ただ、さらっとは言ってみたがそれもそんなに簡単ではない。Youtubeで動画を見たりして自分なりに研究して研いでみるのだが、それでもなかなかうまく研ぐことができない。道具の仕組みを理解してその道具に合った研ぎ方をする必要があるし、その道具を自分がどのように使うかでも研ぎ方は変わる。加えて、安物は刃こぼれしやすく研ぐのも難しいものが多いらしい。刃の角度を一定に研ぐのも簡単ではないので慣れないうちは治具を使うのもひとつだろう。上達するには刃を研いで、その道具を使うことを反復していくしかないだろう。
よく研いだ鑿は皮膚が軽く触れただけで切れてしまうほどらしいのだが…。友人の大工に今度教わってみたい。

自分が使いやすい道具に仕立てるのも仕事
家に、刃になる部分がものすごく短くなっている大工さんのおさがりの鑿があり、恥ずかしながらそれは長年たたき続けて短くなったものだと思っていた。そうではないと知ったのは植木屋をしていた祖父のおさがりの上等な植木ばさみの刃こぼれを直すために砥石で刃をといだのがきっかけだった。
「9分仕込み」といって、大工道具は売られている時点では、基本的に9割までしか仕上げられておらず、残りの1割は自分で手を入れて使いやすいように仕上げていくらしい。例えば金槌の頭だけを買って来て、自分で柄をつけて自分の道具にするのが普通らしいのだ。そういえば家にある昔の道具はそこらで拾って来たような木の枝の柄がつけられていたり、くさびの代わりに釘が使ってあったりする。そういうのを貧乏臭いと捉え、何でも買ったらそのまま使って、使えなくなったら何も疑問を持たずに丸ごと捨ててしまう発想しかなかった自分が恥ずかしい。
今、何でもカスタマイズして何でも自分風にできるようになってきたが、そもそも道具は自分の手になじむようにカスタマイズするものらしいのだ。しかもメンテナンスすれば何十年、あるいは何百年と使えるものも多い。今度、金槌の柄が折れてしまったら、より使いやすい自分の道具にするために柄をどんなものにするかを考えてみたい。